ヒースクリフとキャサリンが荒野をさまよう

2011.06.15

一九三九年作の、ローレンス・オリヴィエ主演のこの映画は、ラストカットで、ヒースクリフとキャサリンが荒野をさまようという、甘美なラブロマンスにまとめあげている。だが、エミリー・ブロンテの原作は、ジプシーの出であるヒースクリフの執念や復讐心を下敷にした、複雑な人間関係のドラマとして展開する。読む人にとっては親しみにくい内容であり、ヒースクリフの行動も、野蛮で陰惨邪悪なものという声も多かった。出版された当初は作品としての評価も低く、文壇でもかえりみられなかったが、皮肉にもエミリーの死後、時を経るにしたがって読者の感銘をよぶようになる。イギリスの作家サマセット・モームも「嵐が丘」を「世界の十大小説」のひとつにあげているが、ほかにも「リア王」「白鯨」と共に、「英語文学の三大悲劇」と指摘する声もあった。車がパワーズに近づくにつれ思いが強くなるのは、作者エミリー・ブロンテや姉妹の幸せには遠い人生である。エミリーは、イギリス文壇にさまざまな話題を提供した、いわゆるブロンテ姉妹の一人として一八一八年七月ブラッドフォード近郊のソーントンで生まれた。